稽古日誌

【稽古日誌】2021/6/29 森本聡生

☆稽古前
自分の現実を突きつけられる。今まで目を逸らしていた部分だ。そこを凝視して、改善策を考える。難しい。自分のアイデンティティーを疑う。自分の価値を問いただす。ここまで自分に向き合ったのはいつぶりだろうか。とりあえず落ち着いたら病院に行こうと思う。

☆アップ
いつもより筋トレを多めに、椿ちゃんの筋トレを応援したり、いのちゃんが絵を描いているのを遠目で見つめる。歌の練習をしっかり。最近、声の開き方が変わってきた。体幹トレーニングは昨日よりしんどくなかった。歌う歌を変えてみた。新鮮だ。バタフライに飽きを感じていたから。飽きたものを、新しい角度で見て飽きないようにするか新しいものに変えてしまうか、僕は新しいものに変えてしまうことを好む。継続性がなく、相変わらず刹那的だ。でも、歌という共通の概念から外れるわけじゃないから、違う歌を歌っても、いつかは繋がってまたバタフライに帰ってこれる気がする。そう、歌というものに飽きないために、違う要素に切り替えたのだ。演劇でも同じことをしている気がする。毎日の稽古の中で、ルーティンワーク化しないように心がける。飽きとの闘い。慣れとの闘い。オートモードにしない。常に楽をしないように心がける。

☆マジカルバナナ
7段階まで到達。今日は調子が良かった。頭を使わなくても今自分が何をしているか分かった感覚。まぁミスもあったけれど。でも、昔かいせいと直澄と三人で10段階をやっていた時に比べるとしびれない。戦っている気がしない。あの勝つか負けるかわからない、限界のリスクを背負った時に比べて、脳みそのリソースが余裕をぶちかましてる。みんな頑張ろう。でも、時間がかかるのもわかってる。みんな10段階、高速マジカルバナナ、できるようになろうぜ。楽しくて仕方がない。そして、直澄が本当に強くなった。ほとんどミスしない。倒したい。どうやって直澄に掃除機をさせようか毎日考えている。どうして強くなった?みんな直澄の名前をよく覚えているからだろう。ピンチになったら出てくるのが直澄の名前だからだ。最近、自分の名前を呼ばれていないことに気が付く。僕にパスを飛ばすのは、基本ひかりん。ひかりんの面白いところは、僕にパスを出す前に矢印が飛んできてる。だからわかる。面白い。みんなに名前を呼ばれないのは同じフィールドに立ててないからか。必死さがないからか。高いところから皆を観ているからだろうか。

☆数字飛ばし
ミスが多い。一つ新しい縛りを入れてみる。結果脳みそが圧迫される感覚。面白かった。みんな意外と対応できていた。というか普通に数字飛ばしをするよりも精度が増している。なるほど、やっぱり、不自由の自由だ。縛った方が、自由にやれる。誰に飛ばしてもいいってなると、決まった人に飛ばしがちになる。それがなくなる。いつも飛ばしてこない人が飛ばしてくるし、いつも飛ばさない人に飛ばす。面白い。新たな交流の線が繋がった。

☆朗読の収録
空気間が好き。静寂な空気。これを始めてから稽古場に新しい空気が入ってきている。面白い。自分の書いた作品をひかりんが読む。もっと行ける。彼女のエネルギーの大きさと生きざまだったらもっと行けた。というのが正直な感想。でも、変化の兆しは見えている。綺麗に整えたものをアウトプットするんじゃなくて、彼女そのものの命の、本気の魂が見てみたい。どうやって引っ張りだす?どうアプローチする?自分のできることを探す。椿ちゃんの朗読。面白い砕き方をしている。将来、人を殺せそうな俳優になりそう。あの角度で世界を見るとどう感じるんだろうか。しかし、椿ちゃんもまだいけた。もっとだもっと。殺そう。君の事を観ている人を全員。

☆エチュード
ひかりんフェスティバル。今日は全員とやってもらう。前に進めないエチュードをする。何を怖がっている。変化を怖がるな。変化に伴う痛みとリスクから目を逸らすな。物語の進むエネルギーをとどめるな。行けるところまで行ってしまえ。そんなもんじゃない。爆発しろ。ひかりんはお客さんじゃなくて相手役を殺せる俳優だ。ぶっ殺せ。支配権を相手にゆだねるな。誰かの指示を待つな。手に持った刀を、今までの人生で鋭利に研いできたんだ。振り下ろせ。相手の首をはねろ。

☆ダンス練習
ダンスは好き。上手くはない。ただ、誰よりも早く覚えてやろうと思った。教えてもらってる側の空気を支配しようと試みる。大学生の時を思い出した。昨日全力でやりすぎて全身筋肉痛。

☆台本稽古
今日もいのちゃん完全勝利の日だった。エネルギーの粘度が変わってきた。恐るべし。今は粗削りでいい。このエネルギーのコントロールを覚えよう。これは技術と経験でどうにかなる。今、稽古場で吐いてる君の言葉は君自身の言葉だ。嘘がない。それを日常生活の自分にフェードバックしろ。自分の醜いところを受け入れろ。綺麗に生きるな。ずるく生きるな。誰かの指示を待つな。自分がこうした言っていう確固たる思いがあるのだから。
直澄の芝居が前のめりになってきた。もっと行ける。直澄の場合は見せる意識が強すぎる。お客さんの為にやりすぎている。自分のやりたいことはなんだるうか?君の心を覗きたい。自己発露せよ。下ネタ以外で。君は自分をさらさない。技術と経験で安全圏にいる。恐れるな、自分をさらけ出せ。
椿ちゃんの芝居、面白い。相手役が変われば、変わる。面白がれ!ちゃんとするな。普段の君はもっと面白いぞ。最近、心の動きが大きくなってきている。楽しめ!遊べ!ちゃんとしなくていい!あと一発逆を怖がるな!どんどん滑っていけ!
ひかりん!前進した!でも、いのちゃんに感化されるな。君の自己発露は叫ぶことじゃない。そっちじゃないと僕は思ってる。そっちの分野もこれからスキルが上がっていくだろうが。もっと、もっと、もっと、君は怒っている。色んなものに怒っている。静かに怒れ。叫ぶことにエネルギーリソースを割くな。君の表出の仕方を探っていこう。
でも、ナイスファイト。サイズがまた一つ大きくなった。アウトプットの方法、技術が追い付いてくる前に、ぶっ壊したい。

正直わくわくしてる。
日々のみんなの成長に。

☆稽古後
廃墟のソファという曲を聞いた。
直澄と思い出話にふける。
直澄も自分も泣いてしまう。
あの頃と様変わりした天文座。
第二回公演から沢山公演を積んできた。新しい仲間もたくさんできた。
なんで泣いたんだろう?あの頃が楽しかったから?今が辛いから?
僕は直澄と出会った2年という時間を思い出していた。
劇団さあもんで出会って、第3回公演、第4回公演と一緒に作ってきた。
劇団さあもんに入ったのは直澄が7人目、それから31人増える過程も一緒に歩んできた。
そしてコロナで公演中止になり稽古が出来ない期間を経て、解散も経験した。そして、天文座の立ち上げも経験した。楽しいことも大変な事も一緒に経験してきた。
皆変わったのに、僕たちはここにいる。
僕らは停滞したのか
違う、僕らは前進してる。諦めずくらいついている。
森本の一番弟子。一緒に良い景色、見に行こうぜ。
コロナ落ち着いたらアイホールでぶちかまそうな。